埋土種子集団への外来種種子の蓄積
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概要
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近年外来植物は,旺盛な繁茂や生育地の拡大を通じて,生物多様性の保全における重大な問題を引き起こしている.外来植物を適切に防除するためには,地上部の生育個体だけではなく,埋土種子集団の形成状況を把握し,それを考慮した対策を立てることが重要である.本稿では,これまでに国内でおこなわれた埋土種子集団の研究例をもとに,外来種種子の蓄積状況を整理した.その結果,人為的影響の強い土地利用がおこなわれた履歴のある場所や,流域全体に種子供給源をもつ湖沼などで,埋土種子集団中に高い比率で外来種が含まれる傾向が明らかになった.また種ごとにみると,セイタカアワダチソウやオオアレチノギク,ベニバナボロギクなどは,種子が散布期後の土壌中にのみ多く含まれることから,土壌中での種子の永続性が比較的短いと考えられた.それに対して,メマツヨイグサやシロツメクサ,ヨウシュヤマゴボウ,ナガハグサなどは,種子数の季節的変動が小さかったり,複数地点から種子が検出されたりしており,長期にわたり土壌中に永続することが推察された.大量の種子散布と土壌中での種子の永続による外来種の埋土種子集団への侵入は,時空間的に極めて広範囲にわたり,それは本来の生態系を不可逆的に変化させうる可能性が示された.
- 2002-01-30
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