台湾産アリサンチャイロヒカゲの生活史
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
アリサンチャイロヒカゲLethe gemina zaitha Fruhstorferは,台湾では高標高地域にわずかの産地が知られる稀種で,生息地はニイタカヤダケYushana niitakayamensisの群落と一致する.生活史に関する知見は少なく,内田(1988)が成虫の生態写真を示し,林(1994)は食草についてふれているのみで,全幼生期についての総括的な記録はなかった.本報では本種の全幼生期の形態,生活環境などを述べ,あわせて台湾産の他の同属各種との形態比較を行なった.台湾の狭義のヒカゲチョウ属Letheは12種が知られ,これらのうち6種(シロオビクロヒカゲ,ウラマダラシロオビヒカゲ,ミヤマシロオビヒカゲ,シロオビヒカゲ,ミヤマヒカゲ,メスチャヒカゲ)がすでに生活史の概要が明らかにされている.筆者らは1993-1994年の1年間に野外調査と室内飼育を行ない,本種生活史の不明部分を追加することができた.卵:直経0.78mm,高さ0.77mm,表面が網目状の多面形をしており,台湾産の他のLethe属各種より小さく,特異な形状を示す.幼虫:1齢幼虫の体長2.3-2.5mm,2齢3.1-3.2mm,3齢4.9-6.1mm,4齢8.7-12.4mm,5齢15.3-22.2mm,6齢34mm.色彩:孵化当初は乳白色,2齢以降は背面に条線群が現れ,4齢までは次第に目立ってくるが,5齢以降はやや不明瞭になる.頭部の突起は2齢時に癌状となり,以後齢を重ねるごとに伸長する.蛹:長さ25.0-29.5mm,幅5.5-7.0mm.淡褐色,体形は細長く,背面から見ると二叉した角状突起が前方に伸びる.卵は食草の主脈に沿って8-11個が等間隔に産付される.幼虫は食草の茎部に集合して隠蔽効化を高める.蛹化は食草の葉裏などで行なわれる.成虫は中部台湾では8月下旬-9月に新鮮な個体が観察されたが,筆者のひとり〓の北部台湾における観察では7-8月初旬に盛期を迎えることが分かった.活動時間は10時より16時に及び,不規則な飛翔を行なう.幼虫越冬.食草はニイタカヤダケ.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1995-09-20
著者
-
顔 聖紘
Laboratory Of Natural Resource Conservation Department Of Biology & Institute Of Life Science Na
-
〓 家龍
Laboratory of Insect Conservation, Research Institute of Plant Pathology & Entomology, National Taiw
-
顔 聖紘
Department of Entomology, National Chung-Hsing University
関連論文
- 台湾産ミノウスバについて
- コモンマドガの再検討と3新亜種の記載
- 東南アジアのマダラガ亜科の2新属の記載
- 台湾未記録のエダシャクの1種について
- タイワンフジミドリシジミの生活史
- ウスコモンマダラフィリピン亜種の台湾からの記録
- 台湾産アゲハモドキガ科の生活史
- 台湾産アリサンチャイロヒカゲの生活史