動機付けにおけるモニタリング技術の意義
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概要
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本論文では,エイジェンシー理論の枠組みで,モニタリング技術の概念を明示的に取り扱ったStrauszのモデルを種々の観点から拡張し,モニタリング技術の意義を詳細に調べる.はじめに,モニタリング・コストが可変である場合の比較静学分析を行った.その結果,モニタリング技術を高めれば,モニタリングの頻度の減少を通じてプリンシパルの期待効用を改善できるが,モニタリング・コストを低めることによっては必ずしもモニタリングの頻度を減らせないことがわかった.つぎに,エイジェントが努力を行ったあと,それを自己査定して報告し,プリンシパルはこの報告にもとづいてモニタリングを行う場合を分析した.その結果,(1)モニタリングの手順に自己査定を含む場合の均衡と含まない場合の均衡では,動機付けのパフォーマンスやモニタリング頻度が異なること,(2)自己査走を含む場合の均衡にもモニタリング技術の水準によって動機付けのパフォーマンスやモニタリング頻度が異なる二つのパターンが存在することを示し,モニタリング技術が未熟なため,自己査定を含まない通常のモニタリングによる管理機構が成り立たない場合でも,モニタリングに先だって自己査定を実施するならば,モニタリングによる動機付けを実現できることを示した.最後に,プリンシパルが表明するモニタリング技術の水準をエイジェントが信頼せず,過小または過大に評価する場合を分析した.その結果,モニタリング技術やモニタリング・コストがどのような水準にあろうとも,エイジェントがモニタリング技術を過小評価するとき,結果としてプリンシパルに有利な契約は存在しないが,モニタリング技術が未熟でモニタリング・コストが小さい場合には,エイジェントがモニタリング技術を過大評価するならば,結果としてプリンシパルは当初の計画を上回る努力をエイジェントから引き出す可能性があることを示した.
- 日本管理会計学会の論文
- 2000-09-30