動機付けにおける自己申告の意義
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概要
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本稿の目的は,委託者が受託者を検査によって動機付ける場合において,受託者が投入した努力水準を自己申告させることの意義を見いだすことである.この目的を達成するために,この委任関係を,プリンシパルとエイジェントの二人によるゲームとしてモデル化し分析を行った.この分析から得られた結論は以下のとおりである.(1)自己申告のない場合に達成可能な均衡における期待効用は,自己申告手続きを導入することで(均衡がなくならない限り)凌駕される.(2)自己申告手続きの導入が原因で均衡が存在しなくなるケースは,検査技術と検査費用がともに相当に低い場合に限られること,したがって,自己申告を生かすためには一定レベルの検査技術が要求される場合がある.(3)自己申告のない場合とは対照的に,プリンシパルが検査資源制約に縛られることなく,検査確率を任意に小さくして,検査コストを節約できる.(4)したがって,自己申告のない場合と対照的に,検査確率が小さいほど期待効用が大きくなる.(5)自己申告がない場合には,ペナルティとして,エイジェントからプリンシパルに対する多額の支払いを要求しなければ達成できないような期待効用を,自己申告手続きを導入することで,ペナルティの最低基準値を正に保ちながら達成できる.
- 2007-03-30