公益事業の負荷平準化による利益管理 : 規制緩和後の電力産業への非協力ゲームの適用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文で扱う電力,ガス等の公益事業の利益管理は,他の産業といくつかの点で異なる特徴を持つ.1)サービスの価格(コスト)と設備利用率との関係需要の平準化による設備利用率の向上がコストの低減,利益の増大,サービス価格の低下に結びつく.2)公共サービスに対する利用者選択の硬直性規制料金のため,柔軟な料金設定ができない.また,利用者側でもサービスを利用するために初期投資が必要で,一旦選択すると簡単には代替サービスに移行できない.3)利用者のサービス購入価格とサービスの社会コストのコンフリクト関係一般的に既存サービスの利用機器の価格は,新サービスの利用機器の価格を下回る.一方,サービスの利用量が増加し,設備能力の上限に達すると,サービス提供に機会原価が生じるが,公共料金では機会原価を反映した価格設定は難しい.本論文では2つの代替的な公益サービス(電力とガス)の設備利用率のアンバランスに着目し,需要を平準化させるためのコントロールの手段として,利用者の機器導入時における補助金政策を提案する.電力会社とガス会社をそれぞれプレーヤーとみなし,ビル空調需要家の獲得を非協力ゲームとして定式化し,以下の2ケースについて定量的に分析し,負荷平準化による利益管理の提案を行う.1)現状の規制を前提として,電力会社は電気蓄熱式に,ガス会社はガス空調に対し補助金を出す.2)規制緩和を前提として,電力会社がガス会社のガス空調に対しても補助金を出す.東京電力と東京ガスについて数値例に適用してみたところ,現実には両者が熾烈な競争をしている事実に反し,規制緩和されると電力会社がライバルのガス空調に対しても機器導入時に利用者に補助金を出せば,より利益を上げることが可能なことを定量的に示すことができた.
- 日本管理会計学会の論文
- 1999-03-31
著者
関連論文
- 博士号取得の現状,問題点,今後の展開(経営行動科学学会第12回年次大会)
- 円卓討論 サービスの管理会計 (特集・サービスの管理会計)
- 知識創造システムの特性と分析 (2) : 特性軸の検証
- 知識創造システムの特性と分析 (1) : 組織における知識創造
- ゲームによる電力会社とガス会社の規制緩和後の負荷平準化戦略(経営・社会 : 社会評価のOR)
- 公益事業の負荷平準化による利益管理 : 規制緩和後の電力産業への非協力ゲームの適用
- M&Aと提携が財務業績に及ぼす影響 : コスト低減の視点を交えた企業間関係の効果測定
- 戦略コミュニケーションのための管理会計システムの設計について
- 書評 中川優著『管理会計のグローバル化』
- 会計制度の課題 : 情報システムの視点から(制度を考える)
- BSCと組織の学習能力 (特集 バランスト・スコアカードと経営戦略)
- 割引現在価値を利用した企業価値モデル (特集 割引現在価値の理論と活用)
- 金融業におけるバランスド・スコアカードの構築に関する研究
- 企業評価と管理会計情報
- 金融業におけるバランスド・スコアカードの構築に関する研究 (監査:新会計基準と監査判断)
- 会計研究の20年 : 情報会計と管理会計の回顧と展望
- 日本の研究機関における管理会計の研究動向
- 持株会社とカンパニー制の管理会計システム (特集 持株会社の管理会計)
- 柔構造組織のマネジメント・コントロールと管理会計情報
- マ-ケティング費・販売費・研究開発費等に関する実態調査--中間集計結果について (特集 研究開発・広告戦略と管理会計)
- CIMの発展と原価計算の課題 (情報システムの進展と会計課題)
- NTTの事業部制と管理会計の展開-2-事業部制管理会計
- NTTの事業部制と管理会計の展開-1-事業部制の導入と組織の変遷
- 環境会計(1)環境に配慮した設備投資決定の課題
- コーポレーションとアカウンタビリティ(コーポレーション)
- 環境経営を支援する環境会計の現状と課題 (特集(1)環境と企業)
- 戦略コストの管理を含むABMモデルの展開(会計・情報・組織)
- 会計研究の国際動向 : 企業情報のディスクロージャーと情報技術
- 意思決定スタイルと情報システム(危機管理)
- 管理会計研究の現状と課題
- 予算制度に対する日本企業の期待変化と問題意識