成人期の知的障害者における暮らしと家計構造
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概要
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本研究は,成人期の知的障害者の暮らしについて家計の側面から現状と課題を明らかにすることを主たる目的とする.そのためにまず,成人期の知的障害者の生活場所の現状について考察をするため,厚生労働省による調査結果を分析した.その結果,入所施設からグループホームへの移行は進んでいるが,家族と同居する者の割合は変わらないことが明らかになった.次にA県にて実施した家計調査を基に,成人期障害者の暮らしの実態を,家族同居,グループホーム,入所施設と生活場所別に分析をした.その結果,家族の経済力,介護力によって障害者本人の生活は規定され,家族同居,グループホーム,入所施設の順に,障害者を支える家族の生活基盤は弱まっていることが明らかになった.また,障害者本人の経済状況については,収入・支出共に一般世帯を大きく下回り,家族への経済的依存も高いことが明らかになった.さらに,家族周期と家族内の支出配分について考察したところ,家族周期の進行に伴い,本人への支出配分は増大することが明らかになった.