レジャー志向性尺度の開発 : 成人女性サンプルによる尺度の有効性の検討と旅行行動への応用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究の目的は,2006〜07年に開発に取り組んだレジャー志向性尺度(試作版,2006;改定版,2007)の安定性,実際場面での使用を想定した使い勝手のよさや現象解析力などの有効性について検討することであった。これまで学生を対象として,尺度の有効性を評価する作業を進めてきたが,本研究では,学生も含め20歳以上,70歳代までの幅広い年齢層の成人女性にまで対象を拡大して調査を実施し(N=228),志向性尺度の因子構造の安定性やレジャー現象を的確に解明しうる分析枠組みとしての効能(判別力)等,有効性の問題について検討した。さらに今回,志向性尺度を"旅行"という新たなレジャー文脈のニーズ把握や行動予測に応用することにより,尺度の新たな意義を探る試みも行った。32の志向性項目を因子分析した結果,先行研究と同じく(1)長期的展望・向上(2)活動性(3)主導性(4)対人関係志向(5)利他主義(6)自然志向の6つの因子が抽出され,下位尺度の内的一貫性も充分に高かった(α=.839〜.706)。続いて,下位尺度ごとの因子得点に基づいてクラスター分析を実施,全体をレジャー志向性に関して様々な特徴をもついくつかのグループに分類した後,グループ間でレジャー参加度,レジャー満足度,内発的動機づけ,好みの旅行スタイル,旅行に求める要素,旅行経験,全般的wellbeing指標等を比較していった。レジャー生活の充実度,生活全体の充実度,旅行等,どの生活局面に関する比較結果にも,最も積極的・活動的な行動傾向を示す「最適型」から→「高活動-対人関係志向型」→「自己啓発型」「低活動-対人関係依存型」→最後に最も消極的・非活動的な姿勢が特徴の「消極型」という順序で,得点・水準が低下していくパターンが認められた。一連の統計分析の結果は,レジャー志向性の考え方が個人のレジャー生活や,ひいては生活全般の充実の程度を予測するのに有効であることを示しており,これを定量化する志向性尺度は,レジャー教育や支援等の実践場面において,効果的に個人のレジャー生活の現状を評価するツールとしての可能性をもつことが示された。
- 2010-01-31
著者
関連論文
- レジャー志向性尺度の開発 : 成人女性サンプルによる尺度の有効性の検討と旅行行動への応用
- "最適な"レジャースタイルを特徴づける中核要素としての志向性概念の検討
- レジャー・アセスメントと施策構築に関する基礎的研究(2)流山市民調査によるレジャー志向とその実態の検討 (日本レジャー・レクリエーション学会第39回学会大会)
- スポーツ団体における女性スポーツの普及・推進に向けた取り組みと活動実態に関する研究-滋賀県スポーツ団体を事例として-
- 02-11-8LBY-1 スポーツ団体における女性スポーツの普及・推進に向けた取組みと活動実態に関する研究 : 滋賀県スポーツ団体を事例として(体育社会学4,02.体育社会学,一般研究発表抄録)
- レジャー・アセスメントと施策構築に関する基礎的研究(3)熊本市民調査によるレジャー志向とその実態の検討 (日本レジャー・レクリエーション学会第39回学会大会)
- スポーツ活動参加促進に向けた予備的研究 -余暇志向性尺度の開発と志向性がスポーツ参加に繋がる可能性の検討-
- 02-5-D317-5 成人女性のスポーツ活動参加促進に向けた予備的研究 : 余暇志向性尺度の開発と志向性がスポーツ参加に繋がる可能性の検討(02.体育社会学,一般研究発表抄録)
- 日常経験における動機づけの検討 : 40 ・ 50 代既婚女性を対象として
- 02-28-K308-6 スポーツ活動促進モデルの検討 : どのようなグループにスポーツ活動への働きかけをするのか?(02.体育社会学,一般研究発表抄録,ひろしま発 ひとを育む体育・スポーツ)
- 02-19-T001-01 中年期女性の時間利用の実態と余暇場面におけるレジャー経験に関する研究(02 体育社会学,一般研究発表抄録)
- PE012 女子大学生の日常生活場面における動機づけについて : 学校、アルバイト、レジャー等の生活領域に対する動機づけの様相とフロー体験の検討(ポスター発表E,研究発表)
- 024K30203 日常生活場面、特にレジャー場面へのフロー理論の適用について : 女子大学生の事例に基づく検討(02.体育社会学,一般研究発表)
- 025E20706 40・50代既婚女性の日常経験と全般的QOLの関係 : ESM即時経験データと一般質問紙調査データの関連度を中心に