弛みをきたしたスレッド型臼蓋コンポーネント周囲の骨組織および膜様組織に対する生化学的,免疫組織化学的,酵素組織化学的検討
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概要
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1983年から1984年にかけて,著者らは変形性股関節症83関節に対しスレッド型臼蓋コンポーネントを用いた人工股関節置換術を施行したが,そのうちの49関節の臼蓋コンポーネントが術後10年以内に弛みをきたした.早期の弛みの発生機序を調べる目的で,再置換術を行った10症例10関節の臼蓋コンポーネント周囲の骨と介在膜様組織を一塊として摘出し,固定,脱灰後,ヘマトキシリン・エオジン(H-E)染色,酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)染色,インターロイキン1β(IL-1β),インターロイキン6(IL-6)に対する免疫染色を行った.また,標本採取部近傍より膜様組織を別に採取し,組織培養を行い培養上訪中のIL-1β,IL-6をELISA法で測定した.H-E染色では,全症例の膜様組織にポリエチレン,金属摩耗粉を貪食した多数のマクロファージを認めた.TRAP染色では,全例にTRAP陽性の破骨細胞がみられた.免疫染色では,IL-1βは10例中1例の膜様組織中のマクロファージが陽性を示したのみだった.IL-6陽性細胞は8別に認め,これらは膜様組織のマクロファージ,異物巨細胞,線維芽細胞,滑膜様細胞さらに骨組織の破骨細胞であった.培養上清中のIL-1βは10例中4例に検出されたのみで,最高値は139 pg/mlだった.IL-6は全症例に検出され,815pg/ml〜170ng/mlと高濃度であった.以上より,臼蓋コンポーネント周囲の骨吸収は,摩耗粉を貪食したマクロファージ等により産生された高濃度のIL-6を介する破骨細胞性骨吸収の促進によると考えられる.さらにスレッド型臼蓋コンポーネントは表面平滑であり,セメント使用やポーラス・コーティング等表面加工を施した器種に比べ,摩耗粉が関節液とともにコンポーネントと骨の界面に侵入し易いと推測される.スレッド型臼蓋コンポーネントの早期の弛みの原因として機械的因子に比し,生物学的因子が優位であることが示唆された.
- 東京女子医科大学の論文
- 1999-10-25
著者
-
金 強中
東京女子医科大学 整形外科
-
土方 浩美
東京女子医科大学看護学部整形外科
-
加藤 義治
東京女子医科大学整形外科学教室
-
伊藤 達雄
東京女子医科大学整形外科
-
梅原 新英
牛久愛和総合病院整形外科
-
梅原 新英
東京女子医科大学整形外科学教室
-
伊藤 達雄
東京女子医大
-
梅原 新英
東京女子医科大学
-
土方 浩美
東京女子医科大学 看護学部整形外科
-
土方 浩美
東京女子医科大学看護学部整形外科学
-
金 強中
東京女子医科大学整形外科
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