ピカソの肖像画における曖昧な視線の知覚(視知覚とその応用,一般)
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概要
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ピカソによって描かれた肖像画においては、複数の視線方向が同時に描かれていて、結果的に曖昧な視線知覚を引き起こす。このような曖昧な視線知覚にどのような知覚処理が関わっているかはまだ判っていない。本研究においては、ピカソの絵画である「マリーテレーズ・ワルテル」を用い、この問題を検討した。実験1では逆相関法を用い、「そっぽ向き」視線知覚には片方の目のパタンと鼻の向きが、「こっち向き」視線知覚には両方の目のパタンが手がかりとなる特徴であることがわかった。実験2では、マリーテレーズ・ワルテルの正立画像・倒立画像において知覚される視線方向を検討した。正立画像では、「こっち向き」・「そっぽ向き」視線の両方が有意に知覚されたが、倒立画像においては、「こっち向き」視線のみが知覚された。これらの結果、「そっぽ向き」視線知覚には画像倒立によって負の影響を受けやすい布置処理が、一方で「こっち向き」視線知覚においては倒立の影響を受けにくい特徴処理が関わっていることが示唆された。これらの結果は、マリーテレーズ・ワルテルには異なる2種類の視線知覚メカニズムを駆動させる視線特徴が同時に含まれていることを示唆する。更に、エジプト壁画等における横顔視線知覚が本研究で示された結果と関係する可能性も議論する。
- 2009-10-22
著者
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