オートポイエティック・システム論にもとづく俳句分析の試み
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概要
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本稿は,基礎情報学を理論的枠組とする,俳句分析のためのオートポイエティック・システム論的アプローチを提案する。基礎情報学では,言語ではなく「情報」,個人ではなく「オートポイエティック・システム」にもとづき,意味形成やコミュニケーションが考察される。具体的には,身体的体験に根差し,論理的な思考過程を超えて生成する各人に固有の意味を「生命情報」,心をオートポイエティック・システムである「心的システム」として捉え,分析の土台にするのである。俳句の重要な特徴の一つは,その簡潔な定型が,必ずしも理性的個人による推論や言語操作のみに還元されない意味形成をひきおこす点にある。したがって俳句の分析には,基礎情報学の理論的枠組が有用と考えられる。従来,俳句はおもに(A)文献学的アプローチや(B)テクスト論的アプローチによって研究されてきた。さらに,両者に対して批判的視座をあたえる,(C)認知心理学的アプローチも登場した。しかしこれらの研究では,論理的思考を超えた意味形成について考慮することは難しい。提案する(D)基礎情報学的アプローチによって,無意識的・直観的な側面をふくむ俳句の創作と解釈について考察することが可能となる。
- 2009-09-15
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