枯草菌のカタボライト抑制に関与するcis配列(catabolite-responsive elements, cres)の機能解析用プラスミドベクターの構築
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概要
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微生物のカタボライト抑制は,培地中にグルコースなどの代謝されやすい炭素源があるとそれを消費するまで代謝されにくい炭素源の分解系の遺伝子発現を抑制する機構であり,炭素源をより効率的に利用するためのグローバルな制御系のひとつである。枯草菌は,胞子形成や抗生物質の生産に関わる遺伝子もカタボライト抑制を受けることが知られている。枯草菌はcAMPをもたないので炭素源のカタボライト抑制は,大腸菌で明らかにされたcAMP-CRPによる正の制御系では説明できない。枯草菌のカタボライト抑制の制御機構はグルコン酸オペロン,アミラーゼ遺伝子,グルコースなどのPTS (phosphoenolpyruvate: sugar phosphotransferase systemによる糖の取り込み系)糖の輸送に関与するタンパク質の精力的な研究により明らかになった。すなわち枯草菌のカタボライト抑制には転写制御因子であるCcpAタンパク質とグルコースなどのPTS糖の輸送に関係するHPrタンパク質が関与している。このHPrタンパク質のセリン残基がATP依存性のHPrキナーゼによりリン酸化され,CcpAタンパク質と複合体を形成し,カタボライト抑制に関与するcis配列(catabolite-responsive element, cre)に結合し,転写抑制および転写伸長妨害を引き起こす。1997年,枯草菌ゲノムの全塩基配列が決定された後,枯草菌の遺伝子の機能をゲノム全体で解析する研究が展開されるようになった。それに伴ってカタボライト抑制の制御系もゲノムレベルでの研究が可能になった。制御因子CcpAタンパク質はカタボライト抑制のみならず炭素源の代謝制御の中心的な役割を担っていることから枯草菌全遺伝子4100のうち,約5%に相当する数百の遺伝子がCcpA支配下にあることが予想される。これらの遺伝子のプロモーター領域の近傍または下流にcre配列が局在すると考えられる。枯草菌のカタボライト抑制に関与するcre配列の共通配列がすでに報告されており,ゲノム配列上から容易にcre類似の配列を検索することができる。本稿では,機能未知のcreの類似配列の機能を簡便かつ定量的に検証するためのプラスミドベクターの構築について報告する。
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