エーリッヒ・フロム「自己実現」論の再構成 : 「持つこと」と「在ること」の連関に注目して
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概要
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本稿の目的は、エーリッヒ・フロムの「自己実現」論を再構成し、その人間形成論的な可能性を提示することである。フロムはしばしば社会および人間を二つの位相に分けたうえで、片方を持ち上げてもう片方を非難するという論法を採用したが、従来それらは素朴な勧善懲悪的図式として理解される傾向にあった。だがその遺稿から明らかになったフロムによる初期マルクスへの直接的な参照は、そうしたフロムの方法論が決して単純な善悪二元論にはおさまらないことを示唆している。マルクスの言う私有財産の「止揚」プロセスとフロムの想定したこつの様式観が交わりあう過程とをそれぞれのテクストにより突き合わせていくことで、フロムの「自己実現」論は、発達の脱中心化を志向する近年の教育人間学的なモメントを理論レベルにおいて批判的に彫琢しうる、他とのつながりに開かれながらも「自己」へと再帰的に準拠する人間形成論として、新たに定位される。
- 2009-09-30
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