脳室冷却灌流に関する実験的研究 : 呼吸,血圧および脳波を中心として
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概要
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猫の脳室系を低温の生理食塩水で灌流し,次ぎの結果を得た。1.側脳室相互間潜流では 呼吸,血圧に対する抑制は極く軽度であり,脳波上では皮質脳波の中等度抑制が認められたが,深部脳波の変化は軽度であった。角膜反射,対光反射も保たれ,疼痛刺激に対する反応も灌流前と変りなく意識水準の低下はほとんど見られない。2.側脳室・大槽間灌流ではa.呼吸は灌流直後深くしかも速くなるが,すぐに抑制されて浅く,緩徐となりやがては停止する。b.呼吸停止が起こるのは流入温の如何にかかわらず流出温19℃前後で一定時間の灌流が必要であり,この時の呼吸中枢の温度は18℃前後と推定され,中枢の低温に耐え得る限界を示すものと思われる。流出温20℃以上では長時間灌流しても呼吸停止は起こらない。C.血圧は灌流を開始しても上昇することなく,呼吸の抑制にややおくれて下降するが,呼吸抑制が著明になると逆に上昇に転じ,呼吸停止時には灌流前の水準にまで達する。しかし,さらに灌流を続行すると急速に下降し動物は死亡する。d.皮質脳波は灌流開始直後は一過性に振巾が増大するが,呼吸抑制と併行して低振巾徐波化し末期にはほとんど平低化する。海馬脳波もほぼ同様の傾向を示すが皮質脳波が平低化しても或る程度の電気活動のレベルを保っている。e.この海馬脳波の態度は,呼吸停止時に血圧が高水準にあることと何らかの関係がある与考えられる。f.灌流末期には瞳孔散大し,対光反射,角膜反射消失し,疼痛刺激に対しても無反応となり,意識水準の低下が著明となる。これは灌流により脳幹部特に中脳網様体の温度が急速に低下する結果,網様体賦活系の機能低下が本態であると考える。g.以上の変化は呼吸停止直後に冷却灌流を停止するとほぼ可逆的に恢復する。
- 千葉大学の論文
- 1963-07-28
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