傅染病の上氣道に及す影響に就て

概要

論文の詳細を見る
傅染病と上氣道とは寔に斟からざる關係を有するものにして多くの急性傅染性疾病例へば麻疹、狽紅熱、インフルエンザ」流行性脳脊髄膜炎等は上氣道即鼻腔より或は咽頭殊に扁桃腺等より侵入するものなりとの説を主張するものあり又慢性傅染病就中結核は多く扁桃腺より身體内に侵入するものなる可しとの議論を固守する者尠からず。されども是等の點に関しては今日之を斷定する事態はず今後充分精細なる觀察を要するものなれば茲には之に就ては論述せず。只傅染性疾病の際上部氣道は如何なる状況を呈するものなるか、即ち上氣道の傅染疾病は如何なるものにして如何なる状態を現はすものなるかを少しく記述せんとす之れ全く上氣道の状態により全身傅染病を早期に診斷し得る事少からざると又上氣道疾病の専門に從事する者は其局處は注意するも他を顧みずして以て意外の失敗を招くことあれば是等に對する警告を兼ねて余は本題を選みたるなり而して傅染性疾病どして急性のものを先に記述し次で慢性のものに及ぶ可く其各々に就て鼻腔、咽頭、喉頭に於ける状況を説述せんとす。
京都府立医科大学の論文
1919-10-20