上部胃癌に対する噴門側胃切除の至適適応基準についての検討

概要

論文の詳細を見る
はじめに:我々の施設では過去の胃全摘後標本のリンパ節転移状況の検討から上部胃癌に対する根治術式として,術前評価が胃上部に限局する直径4cm以下の深達度MP以浅の症例を対象に脾温存の噴門側胃切除(以下,噴切)を施行してきた.今回,これらの症例をretrospectiveに検討し,特にリンパ節転移の観点から再評価し,上部胃癌への噴切の至適適応基準を再考することを目的とした.方法:1992年7月から2007年9月までに行われた上部胃癌術前深達度評価MP以浅の噴切症例206例を対象とし,その予後,再発様式について検討した.結果:病理組織学的検査での深達度はpM:49例,pSM:121例,pMP:28例,pSS:7例,pSE:1例であった.pN1をpSMに10例,pMPに9例,pSSに3例,pN2をpMに1例,pMPに2例認めた.総合所見fStage別の累積5年生存率(他病死含む)はIA:92.5%,IB:86.0%,II:61.5%であった.再発例は5例で縦隔リンパ節再発3例,肺転移1例,脾門部リンパ節再発2例であり,いずれも深達度pMP以深の症例であった.考察:今回の検討からリンパ節郭清範囲の十分な根治性を鑑みて,術前深達度評価がMP以深の上部進行胃癌の症例に対しては脾摘を含んだ胃切除を標準とし,縮小手術として脾温存される噴切の適応は術前評価が上部早期胃癌症例までに止めるべきである.
2009-08-01