フィンランドの初等教育教員の養成カリキュラムに関する一考察
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概要
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20世紀末から、世界各国は、教育を国家戦略として位置付け、競って教育改革を行っているが、その改革の内容の一つが教員養成制度の改革である。その養成制度の改革の大きな柱が、大学院レベルまで引き上げて養成しようとするものである。我が国は、第二次大戦後いち早く、大学で教員養成する制度に改めたが、大学院レベルにまで高める点では遅れをとっている。しかし、一部は将来のリーダーになるような教員を養成するためとして、昭和41年に東京学芸大学に初めて教育学研究科が設置され、その後次々と、教員養成大学・学部に同様の目的をもった大学院が設置された。その教育学研究科について、必ずしも期待した程の成果が得られなかったこともあり、平成18年7月、教育学研究科とは異なるシステムで教員養成しようという制度が、中央教育審議会から提案された。即ち、専門職大学院としての「教職大学院」の構想である。その構想を評価することは、未だその構想が実現を見ていないので、一部の大学にはかなり具体的なところまで計画が進んでいるが、ここで分析評価することはまだ適当とは思われないので、本稿では「教職大学院」について言及を控えたい。しかし、教員養成を大学院レベルまで高めようとする動きは世界の趨勢であるので、本稿では、既に大学院レベルで教員養成をしている国の教員養成のシステム、特に教育課程について考察することを通して、大学院レベルまで高めた場合の教育システムの望ましいあり方について考えてみたい。そこで、ここでは、PISAのテストで高得点を得たフィンランドの教育を支えている教員の養成制度、特に学力の基礎を培っている初等教育教員(class teacher)の養成のための教育課程に焦点を当てて考察することとした。フィンランドでは、1970年代未、初等教育の教員の養成も大学で行うことになった。それは、フィンランドの大学の修業年限が5年で、修了時の取得学位が修士(master)であったので、教員免許の基礎資格が修士になることを意味した。その5年間の教育課程をみてみると、教育学・心理学の調査研究を最も重視していることが一目で読み取れる。それに比べて、教科教育法がそれ程重んじられていないような印象を受ける。また、重視されている調査研究も、文献研究ではなく、教育実践に即した調査研究が重要視されているようである。それは、教育実習にもみられる。教育の技術の習得のみならず、実践を通して学習した教育学や心理学の理論を検証させながら、自分なりの実践理論をもち、教育学的に思考しながら生徒を指導できる教員を育成しようするねらいが読みとれる内容で構成されている。なお、ここで分析対象とした教育課程は、2005年から実施されている教育課程である。近年、フィンランドの教育に対する著作が刊行されているが、そこで紹介されているのは、2004年から実施されている教育課程であり、若干違いがある。
- 山形大学の論文
- 2007-03-20
著者
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