過疎農村における育児の背景 : 医療人類学的研究

概要

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【目的】A村の育児状況を明らかにすることを目的とした。【対象および方法】対象は,未就学児童をもつ母親4名とサービス提供者2名,分析はエスノグラフィーの手法から生成されたカテゴリ間を比較した。【結果】A村出身者である母親の【能動的・主体的な選択による育児】と転入者である母親の【受動的な選択による育児】からなり,【村落の共同性】と【村落のゆるやかな拘束力】のなかで営まれる『日々の暮らしのなかの育児』であった。A村出身者の母親は共同体成員であり,育児は親族の連帯による伝統的なネットワークや共同体内の相互扶助関係から行われる営みであった。一方,転入者の母親は家や人をつなぐ関係が欠如しており,比較的孤立していた。サービス提供者はこの差異に焦点をあてた育児支援をしていた。【考察】共同体成員である母親は個人の自己を確立していける一方,転入者である母親は【育児に対する葛藤】が生じやすい可能性が示唆された。よって,母親である女性の健康に取り組むには,個人の発達と多様な価値をふまえ,女性の主体性を引き出すことが重要である。また「地域」の文化的価値や生活に合わせた援助の必要性が示唆された。
日本母性衛生学会の論文

過疎農村における育児の背景 : 医療人類学的研究

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