シトー会修道院のフォークトについて : トリーア大司教区,ヒンメロート修道院を例にして
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概要
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シトー会の修道院は,一般にフォークトから脱することを企図し,それを達成した修道院とみなされている.しかし,このような見解は,当初から一定の視角からシトー会修道院の特徴を捉え,収斂したものとして扱わねばならず,各修道院の具体的な状況については,各院が存立している地域的な条件を踏まえ,具体的な検証により明らかにしなければならない.とりわけ,かつての帝国内に存在したシトー会の修道院は,各地での貴族,司教,国王による私有教会・私有修道院の形態を保持していたので,必然的に修道院建立者,土地の寄進者,司教区教会,諸公伯,国王との様々な政治的・経済的駆け引きの中で存続して行かねばならなかったのである.そして,このような状況を端的に示しうるのが,修道院フォークトの問題である.本稿は,トリーア大司教区に属するシトー会ヒンメロート修道院を取り上げ,当院の保護者としての役割はトリーア大司教が担い,修道院の発展も大司教との関係に支えられていたことを検証するものである.しかし,大司教の保護は公式に明らかにされたものではなく,ヒンメロート修道院は,各修道院所領を管轄する俗人フォークトとの関係を断ち切ることが出来ない状況にもあった.これらの複合的状況を具体的に明らかにしつつ,シトー会修道院のフォークト問題の解明にささやかではあれ寄与することを狙う.
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