長野県南安曇農村部への工業進出
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
安曇野の工業は明らかに農家兼業に依存しており,農家の側でも兼業労働力を供出しようとする意欲は強い。逆にいえば農家には土地に緊縛されて滞留する労働力が,老若男女を問わず相当量ある。しかし組立工業の大工場は,このような農村労働力の得やすい農村に入る必要と,既成の工業集団の下請生産体系と結合するという二つの要求があるために,既成工業地帯の周辺40〜50kmを離れることができない1。そして1〜2世代を要してその周辺に飯米農家の中高年齢層に依存する中小工場を造出する。兼業農家の工場への通勤範囲は,第3次産業よりも,せまく,10〜30分程度であるから,数箇の組立工場で単純作業に適する労働力は吸収しつくしてしまう。組立工場はこれに対応して分工場,作業場をさらに前進させて単純労働力を捕え,本工場は高度製品の製作に転化する。この段階では本工場は都市的労働力である技能工に依存した工場になってゆく。農業経営の省力化,請負耕作の一般化,農業構造改善事業の進展などによって,農村では相当数の停留労働力が発生し,これらが進むほど,ある種の工業が希求する単純労働者が準備される。したがって関東内陸部のように農村地域内部に既成工業地の核があると,現在の自動車交通の能力で半経40〜50kmの範囲は急速に工業化している。東北,山陰,南九州などの工業化が一向に進展しないのは,このような既成の中小下請工業集団の育成がおろそかにされているためであるといえよう。
- 流通経済大学の論文
著者
関連論文
- 工業の質による都市の4区分 : 工業集積率と給与水準による
- 千葉県の小売商業都市
- ヨーロッパの地場産業と都市形成
- 東日本における工業の圏構造
- 地域研究の事前調査
- 大都市零細工業の地位と性格
- 千葉県の工業
- 足利の都市形成と工業化について
- 工業集積と集積率による都市の階層区分
- 東京日用消費財工業の生産体系と地域配置
- 北陸機業の生産流通体系の概観 : 北陸共同研究報告(1)
- 文政11年改諸国鋳物師名寄記
- 長野県南安曇農村部への工業進出
- 主として工業の分野
- 阪神の工業--京浜との対比において