不良債権処理先送りの合理性
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概要
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本稿は、90年代前半の相対的に健全な大手銀行を対象とし、不良債権処理を先送りした銀行や、それを容認した政府の意思決定は、非合理的ではなかった、という仮説を設定し、先行研究の論理によっては仮説が棄却できないことを示したものである。間接処理であれ、最終処理であれ、銀行は原則として不良債権処理を先送りするインセンティブを持つ。処理は会計上の自己資本を減少させてBIS規制を厳しくする一方で、期待値としてみれば銀行の健全化には役立たないからである。したがって、規律づけの欠如による経営者の保身が銀行の判断を誤らせた、とは言えない。仮に不良債権の存在がマクロ経済に悪影響を及ぼしていたとしても、政府が銀行に不良債権処理を促すべきであった、とは言えない。処理をすれば、倒産で景気が悪くなり、銀行の自己資本減少による貸し渋りが発生するなど、事態が更に悪化する可能性があることに加え、世論が不良債権処理による痛みを嫌う場合には、政府が断行することは難しいからである。
- 久留米大学の論文