メインバンクに関する一考察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
メインバンクは何故借り手企業を救済するのか、メインバンク関係は何故、どのように変化しているのか、といった点につき、先行研究を批判的にサーベイした後、銀行の幹部などへのヒアリングを参考に、考察を行なった結果、以下の結論を得た。従来のメインバンク関係においては、メインバンクが借り手を救済するコストが救済によるベネフィットを上回ったとしても、コストとベネフィットの差にれを本稿では「ネット救済コスト」と呼ぶ)を甘受して救済に当たる場合があった。これは、借り手を救済しない場合に他の顧客が逃げるという「レピュテーション・コスト」が「ネット救済コスト」を上回る場合である。最近では、大都市のメガバンクを中心として、ネット救済コストがプラスの場合は借り手を救済しないようになりつつある。これは、「他行も同様の傾向なので、救済しなくても顧客が逃げていかない」という要因、意思決定の透明性や説明責任が求められる中で、不良債権処理を迫られているメガバンクにとって、「レピュテーション・コスト」を理由とした救済が難しくなったという要因、などによるものである。地域金融機関では救済基準がそれほど変化していないが、それは「借り手が倒産すると地域経済が疲弊して地域金融機関の損失に繋がる」という要因、「地元企業へのセーフティーネットの提供が地域社会からも株主からも求められているから」という要因、などによるものである。