高齢者の生きがい満足度,ソーシャル・サポートと知的低下との関係
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概要
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本研究の目的は,生きがい満足度の違いが知的程度やソーシャル・サポートにどのように影響しているかを確かめることである。被調査者は65歳以上の高齢者160名(男性39名,女性121名)の人たちである。調査は,生きがい満足度調査,かな拾いテスト,ソーシャル・サポート調査の3種であった。まず,生きがい満足度調査質問項目とソーシャル・サポート調査の信頼1生を検討し,次に,年齢段階,生きがい満足度,安定満足度,積極満足度,ソーシャル・サポート,知的程度の相互関係を示し,更に,性差,年齢段階,生きがい満足度の違いによる知的程度としてのかな拾いテスト得点の比較,ソーシャル・サポート得点の比較および1年間の生きがい満足度の変化と知的水準の変化の関係などを検討した。その結果,年齢は,生きがい満足度,安定満足度,積極満足度,ソーシャル・サポート,知的程度,知的程度の変化量とマイナスに相関していた。また,かな拾いテスト得点と積極満足度とに負の有意な関係があり,年齢が高まるほど知的程度が低くなり,積極満足度が低下していることがわかった。また,生きがい満足度はソーシャル・サポートと有意に高い相関を示しており,生きがい満足度の高い人は社会的援助を多く受け,また,知的程度も高いことがわかった。さらに,知的程度は,生きがい満足度,安定満足度および積極満足度得点と有意な関係があった。年齢段階は,生きがい満足度得点ともソーシャル・サポート得点とも有意な関係がみられなかった。主要な結果として,生きがい満足度の高い群ほど知的程度が有意に高くなっており,また,ソーシャル・サポート得点が有意に高くなっていた。つまり,高い生きがい満足度をもつことが高い知的水準を保ち,ソーシャル・サポートを多く受けることがわかった。さらに,1年間の変化の量と方向から考えると,知的変化の上昇度の高い群ほど生きがい満足度の変化量もプラスに高くなっていて,生きがい満足度の変化と知的変化の方向と程度にプラスの有意な関係があり,生きがい満足度が高くなればなるほど知的水準を高め,逆に低くなればなるほど知的低下をきたすことを確認した。知的変化の方向とソーシャル・サポート得点の変化とはその方向においては共通していたが,その関係は有意とまではいかなかった。
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