中国の就業条件不利地域における人口滞留現象 : 中国東北地方撫順市を事例にして
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概要
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中国の就業条件不利地域において,人口滞留現象が見られる背景を検討するために,国有企業改革の進展に伴い雇用問題が深刻化している中国東北地方の地方都市である撫順市を対象として,住民の雇用や収入の状況,収入源等を,アンケート調査に基づいて分析した。アンケート調査では,家計の主な担い手であるにもかかわらず,失業率が高い1940年〜1960年生まれの世代を対象として,本人とその家族に関する情報を収集した。調査結果として以下の点が指摘できる。対象者の半数近くは,実質的な失業者か不安定な就業状況に置かれており,失業者に対する社会保障の水準も低い。また,フルタイムの職業に就いている人々を含めても,撫順市の所得水準は,他の都市に比べて低くなっている。ただし,退職者に対する養老年金の給付水準は比較的高い。このような雇用条件にもかかわらず,失業者や不安定就業者の世帯においても,市外への転出者を出している世帯は,全体の1割未満であり,就業条件不利地域での人口の滞留現象が見られる。彼らの多くは,家族や親族からの金銭的援助を受けており,家族や親族と同居したり,近接して居住したりすることで家計を維持している。とりわけ養老年金を受けている親の世代から,援助を受けている人が多い。ただし,就業状況別にみると,失業・不安定就業グループでは,本人だけでなく家族も失業している場合が多いため,利用できる人的資源も少ない。また,市外に転出者を送り出している世帯でも,これらのグループでは,転出者は比較的収入が少ない職種に就業していることが推測され,彼らから仕送りを受けられる比率は,正規労働者の世帯より少ない。結論として,就業条件の悪い撫順市において人口の滞留がみられる背景として,失業・不安定就業者でも,家族等の収入によって何とか生活を維持できている点が挙げられるが,失業・不安定就業者の場合は,正規労働者に比べて家族等から受けられる支援も少なく,彼らの家計状況はかなり厳しい状態にあることが指摘できる。
- 2009-01-28
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