潮間帯のカニの巣孔 I : アシハラガニ
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概要
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北海道問寒別地方の鮮新統より,アシハラガニの巣孔化石の産出を報告したが(大島・松井1966),その同定の資料・標本として用いた日本各地の現生アシハラガこの巣孔について報告する.アシハラガニは,カニ類としては,最も進化の進んだベンケイガニ亜科に属する.この仲間は,第三紀になってから,出現し,現在では,インド,南部太平洋海域の潮間帯に広く分布している.棲息底質に対する適応性をかなり有して,砂質・泥質・礫泥質の湿地に,その巣孔形態を変えて棲息している.これまで,アナジャコの巣孔として報告されていた多くの巣孔のうち,かなりのものは,アシハラガニもしくはべンケイガニ亜科の巣孔であろう.アシハラガニの巣孔は,アナジャコの巣孔が棲喰い孔であるのに対して,純然たる住孔または避難孔である.その生態学的意義は,基本的に異る.また,この巣孔の産する域までが陸域として,古地理を解明するためにも重要であろう.
- 地学団体研究会の論文
- 1966-11-30