「華嚴經」と教育(六)
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概要
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五十余人の善知識を訪問し、信仰を深めた善財童子は、愈々彌勒菩薩の所にやってくる。善財は彌勒に「どのように菩薩は菩薩行を学び菩薩道を修められるのでしょうか。お教えください」と懇願すると、彌勒は大樓観にいた大衆の前で「この童子は、不退轉の心で厭きることなく勝れた法を習得しようとして、善知識を求め。親近し供養し法を聞き受持しようとしてきた。この童子は、かって頻陀伽羅城で文殊師利の教えを受けて、善知識を求め、多数の善知識に菩薩行を問い、心に疲倦無く、とうとう私のところにやってきた。この童子のように大乗を学ぶものは甚だ稀有である。」と善財を讃えた上で、「このように学ぶ者は、則ち能く菩薩所行を究寛する。大願を成満し、佛菩提に近づき、一切刹を浄め、衆生を教化し、深く法界に入り、一切の諸波羅蜜を具足し、菩薩行を広め、一切の諸善知識に値遇し、生涯に能く普賢菩薩諸行を具えるであろう。……」と善財の成道の近いことを宣言し、文殊師利に諸の法門と、智慧の境界と、普賢の所行を問うよう勧めるが、善財の更なる菩薩の行を学び、菩薩の道を修する方法の問いにあなたは文殊師利をはじめとする善知識に遇うこともでき、それなりの器の持主でもある。善知識の教える所は諸佛を護念することである。悟りを求める気持である、菩提心は諸佛の種子であり、良田であり、大地であり、浮水であり、……と諭し、善財の成道への大願が不退転のものであるとして、大樓観の中に導き入れられる。樓観の中で自分自身の姿を見るとともに佛の描かれた世界が現出していた。その中で深い三昧に耽っていると彌勒は指を弾き、善財を三昧から覚醒させてお主は菩薩の神力をすべて目の当たりにしたと告げられ、彌勒の示した法門は「入三世智正念思惟荘嚴藏法門」であると示され、菩薩の十種の生庭を示され、その上あなたが先ほど目にしたすばらしい光景は文殊師利の威神力によるものであるとも告げられ、普門城に詣でると文殊師利は手を差し伸べて「でかしたぞ善財、若し信心の根を離れれば憂悔に埋没してしまうであろうし、功徳が具わらねば精勤しようとする心も失せてしまうであろうし、多少の功徳に満足しようものならそれで進歩は止まってしまったであろうに……」と善財の精進を讃え、更にすべての法門、大智光明、菩薩陀羅尼、無量三昧、無量智慧をお主は成就してので、普賢の所行の道場へ入らせるようにした。普賢菩薩は、一つ一つの毛孔より光を放ち、世界を照らし、衆生の苦患を除滅して菩薩の善根を出し、……とさながら盧舎那如来の光の世界を現ぜられる光景に接した。この光景を目の当たりにして善財は不可壊智慧法門をわがものにした。普賢菩薩は、「私は測り知れないほどの長期間に亘って菩薩の道を修め、菩提を求め続けてきた。その功徳で不壊の清浮なる色身を得たので、私の名を聞き、私の姿を見たものは必ず清潭の世界に往き、清浮なる身になるであろう」と諭し、普賢の現じた光の世界に觸れた善財の成道も実現したのである。「譬如工幻師能現種種事佛爲化衆生示現種種身」とされるのであり、「聞此法歓喜信心無疑者達成無上道與諸如来等」と結語する。善財の求道は師・善友(善知識)をを訪ねて教えを請い、その教えを通じて信を深めていくものであったが、ゴータマ・ブッダの場合は、修行法・瞑想法を学ぶための師は求めたが、師と仰ぐ師は見当たらない。瞑想し、思惟することを通じて人生の悩みの解決をはかり、苦行による悟りから離れ、悟りへの障りとなる欲望、嫌悪、飢渇、妄執、ものうさ・睡眠、恐怖、疑惑、みせかけ・強情・名声と他人の蔑視という悪魔を斥けてきたのである。善財の修行の姿には慨怠も見られず、苦悩も見当たらない。経典の中で理想化された修行者の姿と生身の人物?との差異が表れているように思われる。佛教では勤習・数習・薫習という語を重要視する。それは「諸悪莫作諸善奉行自淨其意是諸佛教」を求める。なにげない行動の中に自ら善に趣き悪を避ける、身に染み付いた智慧の習得を求めているものであろう。
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