ノルウェーの2006/2007年・初等中等教育課程改訂
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ノルウェーでは2006/07学年度から初等中等学校教育課程の改訂が実施され、それに応じて2009年秋に高等教育機関への新入学制度、2010年春に新職業資格制度が実施される。この改訂は従前の「基礎学校及び後期中等教育に関する法律」(1998年法律61号)の基本的枠内で行われ、かつ、1994年後期中等教育改革時に示された「教育課程一般篇」初等中等教育の理念・目的を継承している。しかし新課程実施方針の「教育原則」は、初等中等教育を通じるものとして新しく設定された。新課程は、(1)基礎学校科目(2)基礎学校及び後期中等教育の共通科目(3)横断的教育課程(4)聾及び強度難聴者の知識向上教育課程(5)知識向上教育課程サーミ篇(6)後期中等教育で構成されており、枠組みとしては(2)〜(5)が新しい。(1)ではノルウェー語、英語の「深化」科目が設置され、また選択科目が増やされた。(2)は小・中学校と高校との両教育を一貫する教育を目指す、(3)は科目間の連携を目指す、(4)、(5)は少数者の教育を重視するという各意図の現れである。(6)では、進学を主とする学科の中の「学問学習専門学科」に造形、理数、社会及び経済、言語の4小学科を設け、高等教育への準備態勢を強化した。職業教育自体は、概ね従来の諸学科の若干の再編成と見られるが、以上の進学態勢強化、基礎学校の選択科目学習の増大により従来よりかなり困難にはなるが、一旦、職業学科に進んだ生徒が追加科目修得によって進学資格を得る課程が各職業学科に残されている。以上のような新教育課程が、ノルウェーの平等主義的教育の伝統、特に1990年代教育の最重要課題とされた「すべての者の教育を受ける機会と権利の平等」な保障を状況の変化に応じて継承発展させるものであるのか、「適合教育」の名の下での教育の格差拡大に重点を移行させるものであるのかは、各科目教育課程等に立ち入った検討及び教育変容実態調査による今後の研究課題としたい。
著者
関連論文
- ノルウェーの2006/2007年・初等中等教育課程改訂
- ノルウェーの初等中等教育課程改訂と数学教科課程 : -2010年1月現在-
- 教養と能力主義・メリトクラシー : 教養と共通内容教育のあり方,その2
- 子どもの権利条約の批准と「子どもの参加」に関する研究
- ノルウェーの2006/2007年・初等中等教育課程改訂(8-【B】世界の教育改革動向,1 一般研究発表I,発表要旨)
- ノルウェーの社会科、宗教・道徳教育及び生活指導 : 2005年9月の見聞ノート・第3報(6 比較・国際教育,自由研究発表I,発表要旨)
- ノルウェーの社会科、宗教・道徳教育及び生活指導 : 2005年9月の見聞・第3報
- ノルウェーの歴史、社会科の教育課程と教科書記述(5 比較教育)
- ノルウェーの高等学校 : 1999年、2000年視察を踏まえて
- ノルウェーの10年制基礎学校教育課程 : その原則と方針、各科目等教育内容・方法の特徴
- ノルウェーの94年・97年初等中等教育の改革 : その概括的調査研究
- ノルウェーの学校教育(その2) : オスロでの小、中学校調査を踏まえて
- ノルウェーの学校教育 : その概要、共通教育理念と後期中等教育制度
- 教養論の今日的意義と教養の概念 : 教養と共通内容教育のあり方,その1 (創刊記念合併号)
- 学校の運動部活動・クラブ活動のあり方の検討 : 文部省の指針・施策におけるその学校教育上の位置づけ
- 大阪府・市の教育政策動向をどうとらえるか(ラウンドテーブル12,発表要旨)
- 中央教育審議会「教育改革」の全体像 : 憲法・教育基本法、子どもの権利条約に基づく教育の観点から
- スウェーデンの高等学校 : ストックホルム市での学校見学・聞き取りを踏まえて
- 1992年実施学校週5日制の検討
- 1992年導入・学校週5日制の検討 : 実施後約2年の動向と問題点、課題
- 生徒の自主的活動と自治を中心とした学校づくり : 大阪での実践と子どもの権利条約に基づく探求
- 子どもの権利と学校の規律権能 : 子どもの権利条約批准にあたっての「学校=法外特殊部分社会」論批判
- 子どもの権利と学校の設置目的・自治・規律権能 : 子どもの権利条約批准にともなう諸課題
- 1992年学校週5日制導入に至る経過
- 子どもの権利条約と学校教育改革の課題
- 提案(1) 大阪府・市の教育政策の動向と大阪府下の自治体(大阪府・市の教育政策動向をどうとらえるか,ラウンドテーブル12,発表要旨)
- 国連・「子どもの権利に関する条約」と学校教育改革 : 子どもの権利行使主体性と学校教育の法規・制度・慣行改革の諸課題
- 都道府県立高等学校管理規則の検討 : その1 職員の服務に関する規定の検討
- 都道府県立高等学校管理規則の検討(その1) : 職員の服務、勤務時間、休暇、出張等に関する規定の概要
- 都道府県立高等学校管理規則の規定の分類
- 学校管理規制の検討 : 総論的先行研究と規定の大略把握による研究方法の探究
- 公教育の危機と親の教育権
- 臨時教育審議会「教育改革」の基本問題 : その改革の原理・原則の検討
- 臨時教育審議会第2次答申の検討
- 臨時教育審議会「教育改革」の本質とあるべき教育改革の方向
- 教師の教育権の原理 : 教育の自由と国民主権を基礎として
- 教育基本法の教育目的規定の存在意義 : 「教育の自由」による存在意義の否定論・局限論の批判的検討を踏まえて
- 教育の本質と教育権
- 教育における国民主権の概念
- 「教育の自由」概念の検討
- 70年代の国の教育理念と高校教育政策
- 教育における人権と主権
- 国民の教育権の基本構造 : 主要諸理論の検討による一試論
- 京都府教育行政の研究 その1