37. 災害応急対策と組織デザインに関する考察
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概要
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本稿の目的は、行政組織、特に都道府県や市町村が災害時の応急対策活動に備えてどのような構造の組織を設計(デザイン)すべきかについて考察することである。本稿では、組織論での蓄積を基に、災害時に直面する不確実性に対して迅速に、きめ細かく対処しうる構造をもった組織が最も生産性を高めるという視点から目的に迫った。災害時の行政組織は、極めて不確実性の高い条件の下で応急対策業務(タスク)の遂行を迫られる。迅速に、きめ細かく不確実性に対処していくためには、組織にかかる情報処理の負荷を削減する戦略と情報処理能力を拡充する戦略を遂行するための組織デザインが必要である。そのデザインは、「自己充足的組織単位への分化」、「垂直的情報システムの強化」、「水平関係の設置」の観点から検討する必要がある。現在、市町村や都道府県でとられている一般的な災害対策本部のデザインは、平常時の部や課を単位に、通常業務と関わりのあるタスクを割りつけ、本部員会議、本部室、本部事務局といった部門を設けて全体の活動を統括するといったものである。このデザインは、特に、部や課といった下位組織の自己充足の程度が低く、下位組織間の相互依存性が高いという特質を有している。その結果、下位組織間の調整の比重が高まり、迅速できめ細かな活動が阻害されることになる。組織論での蓄積を踏まえると、より迅速できめ細かな活動を展開するためには、次のような点に留意した構造の組織をデザインする必要があると考える。 ・各下位組織間の相互依存性が低くなるよう(下位組織間の調整の比重が小さくなるよう)、部や課を単位とした細分化だけでなく、所管地域や援助対象者による細分化など、細分化の基準を柔軟に考える。 ・細分化した下位組織には、財政・予算執行面の権限、活動資源の自己調達権限を与えるなどして自己充足性を高める。 ・細分化によって処理しきれない下位組織間の相互依存性については、お互いのコミュニケーションを活性化させるため、専従の連絡担当者の配置、タスク・フォースの組織化など水平関係を設置する。
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