24. 自然災害時における行政組織のボランティア動員過程に関する考察 : 平成5年鹿児島豪雨・北海道南西沖地震の教訓
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概要
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数多くの課業(応急対策業務)の迅速な遂行が求められる一方で、そのための資源獲得に苦慮する状況下にある行政組織にとって、ボランティアの適切な動員は課業遂行のための重要な要件のひとつである。本論は、自然災害時の行政組織によるボランティアの動員について、その過程(活動開始にいたるまでのプロセス)を昨年(平成5年)わが国が経験したふたつの災害事例(平成5年鹿児島豪雨、北海道南西沖地震)に基づき検討し、そこから教訓を得ることを目的とする。行政組織によるボランティアの動員過程は、行政組織からボランティアへ協力を要請する場合と、行政組織に協力の申し出があってそれを受け入れる場合とでは大きく異なると考える。そこで、本論では、両者をそれぞれ「要請ボランティア」、「申し出ボランティア」という名称で区分し、平成5年鹿児島豪雨については前者に、北海道南西沖地震については後者に照準を当ててそれぞれ以下の点を検討した。・平成5年鹿児島豪雨:孤立者の海上からの救出活動に携わった漁船の、行政組織による動員過程・北海道南西沖地震:奥尻町、北海道本庁、北海道檜山支庁での、活動の申し出のあったボランティアの動員過程平成5年鹿児島豪雨については、複数の行政組織が関わる創発課業(計画等で想定していない課業)であったにもかかわらず、漁船動員に係る意思決定が的確にまた迅速になされたこと、出動要請の伝達に手間取ったことを示し、その原因を検討した。そして、次の教訓を得た。(1)複数の行政組織が携わる創発課業への要請ボランティアの動員に当たっては、当該課業に係るドメイン・コンセンサス(ある組織が遂行したいと思っている目標とその機能が、組織間相互に理解・容認されている状況)を行政組織間で早急に確立することが、的確・迅速な意思決定を図る上で重要であること。(2)要請ボランティアへの要請の伝達に当たっては、複数の伝達パターンを用意し、災害の状況に応じて効果的な伝達を図る必要があること。北海道南西沖地震については、各行政組織が申し出の処理に当たって異なった対応をとっていたことを示し、その原因を「不確実性への対処」という観点から検討した。そして、次の教訓を得た。(1)個々の行政組織における災害時の申し出ボランティアへの対応に当たっては、まず当該行政組織におけるボランティアへの依頼課業を限定し、当該課業への組み込みを前提としながらボランティアの受け入れを判断することが有効であること。(2)申し出ボランティアの特性と行政組織内部の各部局における課業とが対応した受け付けには、「不確実性の低減」に関する利点があること。
著者
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