44. 関東・東海地域の確率論的地震危険度の評価
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概要
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1. 目的 従来、地域住民に深刻な被害を生じ得る大規模な地震に対しては、地震の規模と震源位置を仮定した決定論的な手法により、その地震に対する被害を想定し、これに基づいて対策が検討されてきた。しかしながら地震はきわめて確率的な事象であり、将来の地震の発生位置、時期、規模などを正確に予測することは困難である。一方、地震の発生を確率事象とみなすことにより、地震動強度の確率分布を求めることができる。すなわち確率論的な思考により、すべての地震域や活断層を震源として、発生する可能性のあるあらゆる規模の地震を総合的に考慮した地震危険度を推定することができる。このような考えに基づいて、これまでも歴史地震データから地震発生率を推定したものや、活断層から地震発生率を推定したものがある。本研究では、発生地震のソースタームを新たに分析・設定するとともに、関東・東海地域内の任意の評価対象地点における各レベルの地震動(水平最大加速度)の超過発生頻度を表す地震ハザードの評価や地震危険度マップの作成を容易に実施できるパソコンシステムを開発した。 2. 方法 地震の規模および発生頻度の分布が類似した地震域を設定し、各地震域における歴史地震を分析することにより、各地震域について将来発生する地震の規模別発生頻度分布を設定した。また発見されている活断層について、各活断層による地震の発生頻度や規模を設定した。これらのすべてを震源データとして評価に用いる。評価対象地点(緯度・経度で指定)における地震動の評価においては、これらの全てを震源とし、地震特性(位置、規模、発生頻度)を考慮し、さらに個々の地震から評価地点への距離に応じた地震動の距離減衰(距離減衰式には福島式を採用)を考慮することによって評価地点での各地震動レベルの出現頻度を算出する。また地震動レベルによる木造建築物の破壊度を考慮して、地震危険度(地震による木造建築物全壊の期待値)を算出する。また5km四方を1メッシュとして、地震危険度マップ(最大加速度の再現期間や再現地震動強度の期待値等のマップ)を描く。地震のソースタームは、歴史地震の分析を通した規模別発生頻度分布を適用する他、シナリオベースの地震発生の設定が可能である。 3. 結論 評価手続きをシステム化することにより、関東・東海地域内の任意の評価対象地点に対して、地震ハザードの評価や木造建築物の全壊確率を考慮した地震危険度の評価、また地震危険度マップの作成が容易に行えるようになった。また様々な解析条件を変更した解析が容易に実施できるようになった.地震の規模別発生頻度や深度分布等によって解析結果には違いを生じ得るため、今後種々の感度解析を通して、このような地震のソースタームの検討を進める予定である。
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