48. 地域の安全度の指標化
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概要
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1. 目的 地域のリスクマネジメントは、複雑化した社会に内在または潜在するリスクに対して円滑な対処を保証し、調和の取れた安全な地域社会を構築することを目的とする。このリスクマネジメントの第一フェーズである「リスク分析と認知」では、地域に特有なあるいは特に問題となるリスクについて把握・認知することが必要である。本研究は、地域を対象としたリスクマネジメントの一環として、すべての外的危険要因である「不慮の事故および犯罪」による被害を考慮することで、地域の安全度の指標化を試みたものである。 2. 方法 安全の裏返しである危険の大きさを次のように定義した。危険度=_iΣ(被害の大きさ)×(危険の非受容度) i;危険の種類 ここで「被害の大きさ」は客観的な要素であり、すべての外的危険要因である「不慮の事故および犯罪」による被害を考慮の対象とした。被害としては生命の損失と財産の損失を考慮した。一方「危険の非受容度」は、主観的な要素である。この主観的要素を数量化するための手法として、階層分析法(AHP : Analytic Hierarchy Process)を採用した。AHPはシステムズアプローチに主観的判断を組み合わせた意思決定手法であり、不確実性、曖昧さのある中での合理的な意思決定を支援するものである。1985年から1992年の8年間の期間のデータを使用して、各都道府県における単位人口あたりの危険度(全国の平均値で規格化したもの)を評価した。すなわち、1992年までの8年間における、各都道府県に在住する平均的個人の危険度を評価した。ここで得られた危険度は全国平均値を1として規格化しており、これの逆数をとったものが安全度となる。 3. 結論 総合的な危険度の最も高い県と低い県との間には、3倍以上の差がある。自然災害は地域の特性として不可避な危険かもしれないが、地域によってきわめて大きな差が存在している。一方他の危険、特に自動車事故、生活事故および犯罪は、地理的な依存性があるというよりも生活者個人や社会の安全意識、およびこれに根ざした安全対策に原因するところが大きいものであろう。このような危険度にも地域によって大きな差がある。都道府県別に見れば個々に異なった特徴があるが、上記の大きさの危険度の差異が存在していることは、地域間で安全上過度のバランス不均衡が生じているといえるものであろう。現状では、このような総合的な観点からの状況の把握、および総合的な観点からの課題の抽出がなされていないところに、まず問題があろう。
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