口腔内の温・湿度分布とエア・ブロー,サクション,ラバーダム防湿の影響
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概要
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近年,歯科治療において,審美的,理工学的などの用件より接着技術が頻用されている.口腔を対象とする歯科臨床において,接着の阻害因子である湿度のコントロールが重要である事実を,In vitroの多くの研究,すなわちその上昇により接着強さが低下するという結果が明らかにしている.しかし,口腔の湿度分布やその防湿効果に関する研究は少なく,その詳細は不明である.今回われわれは,今後主流を占めるであろう接着臨床に必要となる基礎データを,口腔の環境面からのアプローチとして,口腔内の温・湿度に着目し,その分布とエア・ブロー,サクション,ラバーダム防湿による変化を検討した.事前に本研究の主旨を説明し同意が得られた,顎口腔機能に異常を認めない成人10名,平均年齢31±4歳(男性5名,女性5名)を対象に行った.なお本研究は,明海大学倫理委員会承認番号A0607に則って行った.測定装置として温・湿度センサ(THP-B4T,神栄)を用い,温湿度変換器(THT-B121,神栄)を用いて,データ記録装置(midi Logger GL200,グラフテック)にデータを記録した.PC上で解析ソフト(midi Logger Software,グラフテック)を用いて検討した.実験1 口腔内温・湿度分布上顎前歯ならびに臼歯の唇(頬),口蓋側にそれぞれ湿度センサを配置し,その温・湿度が安定するのを待って測定を行った.実験2 エア・ブロー,サクションによる温・湿度の変化上顎第一大臼歯頬側部にセンサを配置し,エア・ブロー,サクションをそれぞれ5,10秒行い,処置前後の温・湿度の変化を経時的に観察した.また同部にラバーダム防湿を行い,その変化も測定した.口腔の湿度においては,後方にいくほどその湿度の上昇が観察され,温度も上昇が観察された.相対湿度ならびに絶対湿度の測定においていくつかの差異が認められた.各防湿法の比較においては,エア・ブローならびにサクションにおいて,温・湿度の低下が観察されたが,その影響は一時的なものであり,それぞれを中止すると,ただちに温・湿度の上昇が観察された.ラバーダム防湿においては,防湿後の温度の変化はほとんど観察されないが,有意な湿度の低下が観察され,その効果は持続的で安定していた.部位的な差異同様,相対湿度と絶対湿度においていくつかの差異がみられた.以上の結果より,口腔内の温・湿度の分布に差があること,持続的な防湿効果はラバーダム防湿のみに観察されること,エア・ブロー,サクションにより温度が大きく変化することにより,相対湿度ではなく絶対湿度が湿度の指標として適切であることが明らかとなった.
- 2008-06-30
著者
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高森 一乗
明海大学歯学部形態機能成育学講座口腔小児科学分野
-
波部 剛
明海大学歯学部小児歯科学講座
-
高森 一乗
明海大学歯学部付属明海大学病院クリニカルリサーチセンター
-
波部 剛
明海大学歯学部形態機能成育学講座口腔小児科学分野
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