"Bourne"アイデンティティー : ドライサーにみる多文化主義の可能性
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概要
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本論は思想家Randolph Bourneと作家Theodore Dreiserのふたりをとりあげる。ボーンは20世紀初頭を生きた社会批評家であるが,当時としては極めて進歩的であった彼の多文化主義的理想は,現代のいわゆるポストモダン社会,多文化社会の在り方という文脈から解釈される可能性を秘めており,現代社会を読み解く上で注目すべき思想家である。いっぽうドライサーは,20世紀初頭の変革期のアメリカを,いわゆる自然主義の観点からSister Carrieなどにおいて描いた作家で,近年のリアリズム小説読み直しのトレンドのなかで再び注目されている。2006年はドライサーがThe American Tragedyのモチーフにした殺人事件が起こってからちょうど100年にあたり,実際の事件現場であるニューヨークのビッグ・ムース湖に「巡礼者」が数多く訪れたり,トバイアス・ピッカー作曲によるオペラ翻案がメトロポリタンオペラで初演されたりと注目を集めている。ランドルフ・ボーンとセオドア・ドライサーは同時代の文筆家であり,お互いを好意的に評価した間柄であるが,本発表では,ボーンという多文化主義者の目を通してみたドライサー,という主旨でふたりの思想に迫ると同時に,20世紀前半を生きた彼らの思想が現在において持つ意義を探ってみたい。
著者
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