沈黙したアブラハムの神 : ハロルド・ピンターの『給仕エレベーター』
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文は英国の劇作家ハロルド・ピンターの『給仕エレベーター』(The Dumb Waiter)における「沈黙」がもつ政治的・宗教的意義について研究したものである。この劇は旧約聖書におけるアブラハムの挿話と相関性を持っている。しかし、登場人物の一人ガスがもう一方のベンによって最終的に生け贄にされてしまう点でむしろパロディーに近い悲劇となっている。その点でボブ・ディランの「ハイウェイ61再訪」(`Highway 61 Revisited')に登場する神に近い。ホロコーストを含めた第2次世界大戦の悲劇的歴史の後に訪れる神の沈黙の引喩でもある。「不条理」な沈黙がピンターの『給仕エレベーター』を支配している。
著者
関連論文
- 奇(あや)しき幻影(ヴィジョン) : 「亡霊たちの浜辺」とメアリ・ロビンソンの不安定なアイデンティティ
- 「コンベンションと革新〜牧歌風挽歌における冬の風景」
- 沈黙したアブラハムの神 : ハロルド・ピンターの『給仕エレベーター』
- 女性の慈善とバーボールドの曖昧な「公共心」 : ユニタリアン文化のジェンダー問題
- 氾濫する慈善とHannah Moreの福音主義 : Coelebs in Search of a Wifeの逆説(パラドックス)
- 優柔で、不安な女性の慈善 : Mary WollstonecraftのMaryとその背景
- 「引喩」の政治性 : ロマン主義時代の女性詩における感受性言語と「公共圏の不安」
- 4. Remembered Acts of Kindness : James Losh and the Romantics
- R. S. トマスのウェールズ農耕詩 : イアゴ・プリサーチが歩き続ける不条理な原自然的風景