ブータン王国における地方分権化と住民参加型農村開発の課題
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概要
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ブータンの社会経済開発理念は、国民総生産(GNP:Gross National Product)ではなく、国民総幸福(GNH:Gross National Happiness)の追求として端的な表現が与えられている。多くの開発途上国が採用した外資導入による輸出志向工業化でなく、独自な第三の道を通しての「近代化」を求めている。ブータン自体、国際社会に向けて、GNH開発理念のもとに物質的豊かさより精神的豊かさの重視、あるいはこの両者が調和した開発を求めると宣言している。今日、GNHは国際社会から注目されている(The Centrefor Bhutan Studies 1999)。GNHは、ブータン国民の伝統的価値観や生活様式との連続性を保った自律的、内発的、漸進的な開発理念である。成文憲法を持たなかったブータンが、GNH達成を目的とする「近代化」を進める基盤として地方分権統治体制を中核にした新成文憲法を2008年に発布する。本稿は、まず1960年代から始まった、ブータンの社会経済開発のための制度改革の実績をレビューする。次いで、1981年以降の制度改革の焦点である持続的な社会経済開発と住民参加を担う基礎的自治組織=地区(geog)育成の課題を、わが国ODA「ブータン王国地方行政プロジェクト 第1フェーズ」(2004年3月〜2006年10月)の運営指導調査に参加して得られた観察に基づいてまとめる。GNH開発理念という長期目標を達成するために地方分権化とその担い手である地区(geog)の育成が課題である理由を考察したい。
著者
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