岩石をどのようにみるか
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概要
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近ごろ,"月の地質学"とも云えるものがいろいろの点で関心を集めている.その一つには,月面の地質が地球の表層部-地殻のそれと余りにも異なっている点にある.一方に,地球自体については,マントルの論議が高まっている今日,それと明確に区別される"地殻"の意義については改めて深く考えさせられるものが多い.実際に,地質学への入門を説くにあたって,地球の発生から今日の状態にいたった過程を系統的にのべようとすれば,この地殻のなりたちについて納得のいく説明の必要を誰しもが痛感させられていることであろう.こうした中で,すでに4年前,湊正雄教授は地球発展の道程の最初期に"月の段階"が存在したであろうことを述べている.その後に知られた月面の情報はこの考え方を充分に支持するものの様に思われる.これに次ぐ"地質時代"には,地球に固有な作用として,地表の岩石の風化・分解,その削剥・運搬・堆積といったできごとの進行と地球の内部から放出される物質・エネルギーとの相互作用の結果としてここに地球に固有な地殻が生みだされたのである(MlNATO & HUNAHASHI, 1970).長年にわたるこの運動のたたまりが,数十粁の厚さに達する今日の地殻をつくり上げたのであって,この無から発してこれまでにたち至った運動の体系が地質学なのである.すべての岩石はこの体系規制下で地殻のうちに生みだされた産物である.従って,それは地殻のあらゆる運動と深いつながりをもっており,そのつながりを断ち切ってこれを考察することは真の岩石像をつくる道ではない.岩石は地殻の運動過程・発展過程の産物なのである.
- 地学団体研究会の論文
- 1971-11-25
著者
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