焼あごのだし汁に関する研究(第一報)
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概要
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長崎県で古くから使われてきた焼あごについて、現在どの程度普及しているのか調査した。また、焼あごだし汁の呈味成分のうち、酸度、アミノ態窒素量、5'-IMP量および遊離アミノ酸組成を調べ、それらの成分からみた適当なだし汁の取り方について検討した。1)アンケート調査を行った家庭のうち、焼あごを使用していたのは、生産地である上五島地区(A地区)で約60%、長崎市およびその近郊地区(B地区)で約40%であった。A地区では、焼あごだしをうどん、みそ汁といった普段の料理によく利用しており、B地区では、正月料理である雑煮への使用が最も多かった。2)焼あごには、旨味を呈する5'-IMPが7.37mg/g含まれていた。焼あご使用濃度1%のだし汁を十分に加熱(沸騰後60分間)したときの5'-IMP量、アミノ態窒素量、酸度はそれぞれ7.85±1.48mg/100ml、3.20±0.21mg/100ml、2.01±0.12ml/100mlであった。遊離アミノ酸組成は旨味を呈するグルタミン酸、甘味を呈するグリシン、アラニンがそれぞれ7.9%、12.0%、8.5%含まれていた。3)加熱時間にともなう酸度、アミノ態窒素量、5'-IMP量は、ともに沸騰後10分間に急激に増加し、その後30分から60分までの増加は緩慢であった。この傾向は加熱に先立ち浸水を行った場合も同様であった。4)予備浸水時間が長いほど加熱前の酸度、アミノ態窒素量、5'-IMP量は高く、加熱後最高値に達するのに要する時間も短かった。5)酸度、アミノ態窒素量、5'-IMP量からみた適当なだしの取り方は予備浸水を行わない場合、沸騰後10分間の加熱ではやや不十分で、沸騰後20〜30分間程度の加熱を行う必要がある。また、予備浸水を30分以上行うと、加熱時間は沸騰後10分間でほぼ十分であることがわかった。
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