介護事故調査が析出させた「介護周辺」の課題 : 「足るを知る介護」を求めて
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概要
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施設介護現場での介護事故調査を行い、事故発生の要因と背景を分析し介護事故を予防するための留意点と、事故が訴訟という不幸な事態に至らないために利用者と介護提供側に何が求められるのかを考察した。事故の種類では、転倒が最も多く次に転落や誤嚥・窒息であった。発生場所の頻度は、居室、そして食堂や廊下の順であった。発生状況では、居室と廊下で事故が介護職不在時に多発していた。施設側は事故状況を家族に報告していたが、家族のうちの約30%はその説明に不満をもち、この内の15%が訴訟に至っていた。不満の内容は、事故発生の原因と処置に対し施設の説明が曖昧・不十分で納得いかないが多くの意見だった。施設は発生した事故の再発防止に向けて何らかの対策を取っており、半数の施設でその効果があったと答えていた。以上から事故予防のためのチェック項目として1.施設職員に関する問題2.施設の設備・構造などのハード面の問題3.利用者自身に関する問題4.介護職の健康管理の問題が挙げられた。利用者とその家族が施設の事故説明に納得し両者間で訴訟という事態を回避するには、施設の職員と利用者家族・本人との間でのコミュニケーションによる意思疎通、事故状況を客観的に残すための介護記録の作成が施設に求められる。また、施設の積極的な事故情報公開は、利用者への施設で発生する事故への現状認識の育成などの啓蒙となり、この共通理解にたった上で施設が事故対策を行うことが、サービスの利用者と提供者間に起こる訴訟という状況を避け得る方法のひとつであると考えられた。
著者
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