経典解釈と説法 : 『釈軌論』第五章における議論
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概要
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世親の『釈軌論』は経典解釈の方法を説き示した論書であり,後代の仏教に大きな影響を与えた.そのなかでもよく知られているのが,『釈軌論』第一章で説かれる五つから成る経典解釈法である.これは,目的・要約された意味・語句の意味・関連・論難と回答というの五つの順序で経典が解釈されるべきことを説いたものである.ところが,終章である『釈軌論』第五章では,「〔教法を〕尊敬して聞くことに関する〔話〕」が,「目的など」すなわち五つから成る経典解釈法よりも先に説明されねばならないと説かれており,これは第一章における記述と矛盾するように思える.本稿では,『釈軌論』第五章冒頭に見られる「説法者」という語句に着目するこよなどにより,同章が,聴衆の面前で説法する際に語られるべき話を提示したものとして位置づけられることを論じた.その結果,〔書物の形での解釈ではなく〕説法の際には,「〔教法〕を尊敬して聞くことに関する〔話〕」が「目的など」よりも先に説かれるということが,同章で述べられていることを示した.同時に本稿は,経典解釈者あるいは説法者に対する指南書としての『釈軌論』の特徴を指摘した.
- 2008-03-25
著者
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