ボン教『二諦分別論』の二諦説
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概要
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ボン教は仏教の思想体系を取り入れて,独自の体系を創り出したと一般に言われており,仏教同様,ボン教にも二諦説が存在する.チベット仏教で"dBu ma bden gnyis"といえば,ジュニャーナガルバの『二諦分別論』(Satyadvayavibhanga)を指すが,ボン教で"dBu ma bden gnyis"といえば,ヤルメー・シェーラプウーセル(Yar me Shes rab 'o zer,1058-1132)の『二諦分別論』(dBu ma bden gnyis kyi gzhung)を指す.本稿では,ボン教の二諦説研究の手始めとして,ボン教『二諦分別論』の二諦説を解明する.主な事項を以下に概説する.まず,顕現を理解する4主体が以下のように設定される.(1)眼病者:二重の顕現が生じる.(2)凡夫:様々な顕現に諦執をなす.(3)後得知:顕現を幻の如く偽りと見る.(4)仏の等至:如何なる顕現も見ない.また世俗は2段階に分類される.まず,世俗が清浄世俗(dag pa kun rdzob)と不浄世俗(ma dag kun rdzob)の2つに区分され,さらに,不浄世俗が実世俗(yang dag kun rdzob)と邪世俗(log pa kun rdzob)の2つに区分される.これを上述の4主体に対応させると以下の通り.(1)眼病者:邪世俗(2)凡夫:実世俗(3)後得知:清浄世俗(4)仏の等至:対応なし一方,勝義には区分は存在せず,二義的な勝義は設定されない.したがって,語義解釈としては,カルマダーラヤとタットプルシャの2解釈のみが採用される.
- 2008-03-25
著者
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