ロントゥンによる5つの空性論証形式の分類
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概要
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ナーガールジュナ(Nagarjuna, ca. 150-250)以来,種々の方法と形式によって空性・無自性性の論証がなされてきた.8世紀以後,代表的な空性論証の形式を集めてきて整理しようとする傾向が現れてくる.とりわけ,カマラシーラ(Kamalasila,ca.740-795)が提示した5つの空性論証形式や,アティシャ(Atisa,Dipamkarasrijnana,982-1054)の説く4大論証因(gtan tshigs chen pobzi)は注目される.インド文献中の空性論証形式の分類については,すでに江島氏の『中観思想の展開--Bhavaviveka研究』(pp.227-248)において詳細に解説されているので,そちらを参照されたい.本稿では,チベット諸文献中の空性論証形式の分類を扱う.その中でもより複雑な分類を提示する,ロントゥン・シェージャクンリク(Ron ston Sesbya kun rig, 1367-1449,サキャ派)の『論理道全明』を中心として取り上げる.ロントゥンは,以下に示す2段階の2つの分類を統合し,3段階の分類を提示する.また,他のチベット諸文献中にも,下記の分類(A),或いは分類(B)に相当するものが多く存在する.☆ロントゥンによる分類(A)・1段階目:金剛片因・破有無生因・破四句生因--中の身(=空性)を完全には決定しない.・2段階目:離一多因・縁起因--空性の意味を完全に決定する.☆ロントゥンによる分類(B)・1段階目:離一多因・金剛片因・破四句生因・破有無生因--有の増益には対治をなすが,無の損減には対治をなさない.・2段階目:縁起因--有の増益と無の損減の両方に対治をなす.☆ロントゥンによる総合的分類(分類Aと分類Bの統合形)縁起因(3段階目)離一多因(2段階目)金剛片因・破有無生因・破四句生因(1段階目)
- 2007-03-25
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