薄い天然放射能試料からのγ線を用いたGe半導体検出器の効率校正
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概要
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天然放射能試料である塩化カリウム粉末,ウラン燐酸塩鉱物,ならびに空気中の粉塵を160cm^3 Ge半導体検出器の検出効率を決定するために用意した。試料は薄いので0.1MeV以上のエネルギーのγ線における自己吸収効果による計数の損失は無視できるか計算で補正できる。ウラン燐酸塩鉱物の中にはトリウム系列の放射性同位元素がほとんど含まれていないので,その測定スペクトル中の多くの全エネルギーピークについて,それがどんな核種からのγ線によるものか定めることが容易であった。ウラン燐酸塩鉱物試料は教材として販売されているものであり,入手しやすい。本研究では,検出器の窓から5cm上で0.61MeVから2.2MeVまでのγ線に対する検出効率を塩化カリウムとウラン燐酸塩鉱物試料だけを用いて推定した。また,検出器の窓上の検出効率もこれら2つの試料と空気中の粉塵の試料からの0.14MeVから2.6MeVの範囲にある強いγ線に対して推定した。推定した検出効率は^<152>Euから出る0.12〜1.4MeVのγ線に対して決定した検出効率とほぼ一致した。環境試料はしばしば天然放射能を含んでいる。本研究の校正結果はそうした試料中の天然放射能の定量的な測定に役立つと思われる。検出器の窓の上の検出効率をカスケードγ線とX線の偶発同時計数の影響に対して補正すれば,それを使って大気粉塵中の^7Beのような弱い放射能も精密に決定できると思われる。天然放射性同位元素の発見はその後に人類が成し遂げた多くの科学的偉業と関係している。そのため,これらの試料を使って行う効率校正の実験授業は学生の基礎自然科学の学習に役立つと考えられる。
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