ハムスター輸卵管の鋳型作製の試み
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概要
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これまでに、動物組織の血管などの管腔を立体的に観察する方法として色々な試みがなされてきた。それらを調べて見ると、注入剤としてワックス[1]、液体セルロイド[2]、ビニール樹脂[3]を用いる方法、さらに造影剤[4]や色素を注入し厚切りの連続切片から再構築する方法[5]、などが挙げられる。これらの鋳型の観察は主に光学顕微鏡で行うための方法であった。一方走査電子顕微鏡(SEM)の発達に伴い、そこで観察するための試料作製の試みもななされてきた。その中にはラテックスゴム[6]やシリコン樹脂[7]を注入する方法が行われた。特に村上[8-12]はメチルメタクリレート樹脂をもちいて、ラット腎糸球体の鋳型を作製することに成功し、走査電顕用(SEM)の試料の作製方法を確立した。近年、近藤[13,14]はMercox樹脂を用いてマウスの胎仔の血管樹脂鋳型作製に独自の注入装置を考案し、胎仔(18.5日)の全身鋳型作製に成功し、SEMでその全体像や組織の局部における毛細血管の分布の様子を詳細に報告している[15-22,23]。これに対して、管状構造からなる輸卵管や精巣上体(頭部-体部-尾部)がどのような管状の配列から成るのかは、まだその詳細は報告されていない。ハムスターやマウスなどの小動物では、輸卵管(卵管)などは、肉眼や光顕で管状構造のものが蛇行しながら一塊となって、卵巣と子宮の前端部との中間に位置していることが判別できるけれど、しかしこの卵管がどのように蛇行しているのかは正確に知られていない。そこで、著者はこの蛇行の成り立ちを詳しく調べるため、Mercox樹脂を注入する方法を応用して、卵管の鋳型を作製することを試みた。従来から行われている血管鋳型作製法では動物の心臓または腹部大動脈上部から、チュブ(又は注射針)を挿入し、生理食塩水で血管腔洗浄する潅流法に続き、樹脂を注入するものであるが、本実験では卵管の漏斗部から直接樹脂を注入する方法を行った。このような方法で卵管の鋳型作製が可能なのかどうかについて、若干の知見を得たので報告する。
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