耐用年数の再検討(1)
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概要
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我が国企業は国際化の進展と技術革新の進歩が著しく,企業を取り巻く環境に関して国際競争力の点で公平性が求められており,平成19年税制改正では,残存価額及び償却可能価額の撤廃,新たな定率法(250%定率法)の採用等,大きな改正が行われたが,耐用年数は,僅か3設備について短縮されただけで,大きな見直しは行われなかった。そこで,本論文では,我が国の減価償却の基礎となる固定資産の法定耐用年数に関して,その沿革と現行制度における弊害を整理し,また,国際的な視点から減価償却の耐用年数のあり方について検討したものである。本号では,上記のうち,我が国固定資産の法定耐用年数の沿革と現行制度を整理し,固定資産の耐用年数が法定されている意義を採った。我が国で,初めて固定資産の耐用年数が定められた大正7年は,物理的減価のみを考慮して財務省(旧大蔵省)の内規として堪久年数(耐用年数)が定められたが,昭和12年の改正で初めて物理的減価に経済的減価が加味されて算定が行われ,堪久年数(耐用年数)が短縮された。その後,堪久年数(耐用年数)の短縮等の整備が行われながら,昭和17年の改正で名称が堪久年数から耐用年数に改められた。そして,戦後,昭和20年9月に,財務省(旧大蔵省)の内規として定められていた固定資産の耐用年数が「法人格税取扱」として公表され,昭和22年に法定されたが,昭和22年改正は終戦直後の混乱期での改正であり,その後の新規産業の出現・発達のために,次第に固定資産の法定耐用年数が当時の実状と乖離し,シャウプ勧告に従い,昭和26年,現行制度の基礎となる法定耐用年数が定められることとなったのである。この昭和26年改正では,固定資産の法定耐用年数算定の際に,その算定の困難さ故,物理的耐用年数や経済的耐用年数ではなく,固定資産に通常加えられる修繕を加えた場合にその固定資産の本来の用途において効用を上げることのできる期間を固定資産の法定耐用年数とする効用持続年数の概念を新たに採用した。しかし,この固定資産の法定耐用年数は平均的な使用状況にある固定資産を基準に算定されたものであるため,それぞれ異なる事情にある固定資産の耐用年数としては適正なものであるとは言い難い。そして,昭和26年改正以後,昭和36年,昭和39年に固定資産の法定耐用年数に大きな改正が行われたが,昭和40年の減価償却制度の大改正時には大きな改正は行われなかった。その後,産業構造の変化に対応すべく個々の固定資産の法定耐用年数や種類に見直しが加えられているが,40年以上にわたり,大きく見直されることなく,昭和26年の改正を基礎に効用持続年数を採用することの問題を抱えたまま,精徴な区分を持つ固定資産の法定耐用年数が設けられているのである。以上のように,我が国では,固定資産の耐用年数の法定に際して,物理的耐用年数や経済的耐用年数を合理的に算出することが困難であるため,昭和26年に採用された効用持続年数に基づく固定資産の耐用年数が法定されているが,この法定耐用年数も異なる事情にある個々の固定資産を考えた場合には問題を含むものである。そして,このような問題を含む効用持続年数を基礎として算定した結果である我が国の固定資産の法定耐用年数は,その固定資産の耐用年数というよりも,企業の自由な判断で減価償却が行なわれた結果生ずる不公平・不公正を回避するために課税庁が設けた投下資本回収期間であると理解でき,司法判断でも,課税処理の大量性ゆえに個々に耐用年数を決定することは困難であることを根拠に,恣意性の排除と公平の確保の見地から,容認されているのである。昭和26年の戦後間もない我が国は,高度のインフレと経済が混沌とした時代であり,固定資産の耐用年数を細かく法定することで減価償却制度の統一を図り,公平・公正を確保しなければならなかった状況にあった。しかし,現在の我が国は,終戦間もない昭和26年改正当時とは異なる状況にあり,税秩序が保たれているが,固定資産の法定耐用年数に大きな改正は行われていない。さらに,固定資産の法定耐用年数を投下資本回収期間と提えた場合,より複雑化が進む我が国企業や国際競争力の強化の観点から,投下資本の回収期間である固定資産の耐用年数を詳細に法定することが重要であるか否かは疑問でもある。したがって,次号では,我が国の現状を鑑み,固定資産の法定耐用年数のあり方についてさらに研究を進めて行きたいと考える。
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