生活困窮者課税に関する理論的検証
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概要
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現在,消費税率の引上げは避けられない状況にあり,消費税率引上げにより低所得者の負担率はさらに大きくなることが予想される。主要な学者の見解も「生活のために最低限必要となるもの」への課税は避けるべきであることを述べている。しかしながら,わが国消費税では一部を免税,非課税としているが,多くの品目が一律5%の課税物品である。そこで,「生活必需品」に対する課税のみではなく,生活困窮者への課税排除のための方策について検証してみた。第一に諸外国における軽減税率の採用の実態を検証し,わが国でも軽減税率の採用の検討をすべきであるが軽減税率が採用されても生活困窮者への課税の排除とまでは至らないことが明らかとなった。第二に「負の所得税」制度を検証し,フリードマンの提唱する「負の所得税」は多くの問題をかかえていると同時に,社会保障制度について唱えるものであり生活困窮者への課税排除のための制度としては不十分な制度であることが明らかとなった。第三に,カナダのGST制度を検証し,GST制度では逆進性緩和の為に生活必需品への軽減税率の採用と同時にGSTを還付する制度(GSTクレジット制度)が整えられているが,GSTクレジット制度には真に生活に困窮する者以外にも還付が行なわれるという問題も明らかとなった。そこで生活保護受給申請制度を消費税の還付の判断基準として利用することの適否を検証し,判断基準として適していることが明らかとなった。以上のような検証の結果,まず逆進性を緩和するためには生活必需品への低減税率の採用が不可避である。さらに生活困窮者に対する課税排除実現のためには,カナダのGSTクレジットを参考としGSTクレジット制度の持つ問題点を解決した制度の導入,つまり生活保護受給申請の利用による消費税の還付制度を整えることが必要である。
- 2004-12-31
著者
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