格助詞「へ」の使用・不使用 : 富士谷成章・本居宣長の文章の場合(加畑達夫先生 松本時子先生 定年退任記念号)
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概要
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口頭語の世界において、江戸時代に入つてもなお用法を拡大させていた格助詞「へ」は、文章語ではどのような勢力を持っていたか、同時代の国学者富士谷成章および本居宣長の文章において比較検討した。成章はみだりに「へ」を使用することを避け、次第に使用を自粛する方向へと向かったが、これとは対照的に、宣長は積極的に語学書や和歌の釈文に「へ」を取り込んだことが判明した。ただし、「へ」の本来もつ指向性が、意味上係ってゆく方向や範囲を示したり、前方から後方への流れの上に捉えられる意味の繋がり方を説明したりするのに表現上適っていたというのが、宣長「へ」多用の一要因として考えられる旨を述べた。
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