近代天皇制『政治神学』研究(その1)
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概要
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明治維新(1868年)から明治憲法制定(1889年)にいたる約20年間は、近代の日本国家の性格と"臣民"の諸自由の考察にとって重要な期間であった。明治政府は、封建的幕藩制国家から「国民」国家を形成する過程で、国民的統合のために天皇=君主権力の自立化とその神聖化を推し進めるイデオロギーと国家的/社会的装置を構築する試みに着手した。維新政府による「上から」の「宗教改革」と「文明開化」が強制され、近代社会形成のために臣民に経済的・社会的自由が与えられた。その結果、日本の近代国家に「神聖国家」イデオロギーと国民国家的「信教の自由」が明治憲法に定着させられるにいたった。明治「国民国家」の一員として"国民"は「信教の自由」を獲得したが、同時にそのことは「神聖国家共同体の一構成員」としての"臣民"を創出することでもあった。この矛盾を「解決」する国家イデオロギーおよび国家装置として「国体」政治神学が準備されねばならなかった。