ビデオ映像の表象性理解は幼児にとってなぜ困難か? : 写真理解との比較による検討
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概要
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本研究は5,6歳児を対象に,映像と現実との相互作用の可能性の認識を指標として,ビデオ映像と写真の表象性理解の発達プロセスを探ることを目的としている。そのためまず,先行研究を踏まえて,実在視から表象性理解へと至る3段階の発達モデルを提起し,そのモデルの妥当性を実験的に検討した。実験では,映像の人物が息(風)を吹いたらモニターの前に置いた紙人形が倒れるか否か,また,子どもが指示対象についての質問と誤解している可能性を考慮して,モニター画面に注意を向けさせ,そこから「風」が出てくるのか否かの二種類の質問を行った。なお,現実と映像の相互作用を仲介する物質としては,可視的でない「風」の他に実体感のある「ボール」を使用し,その違いの効果についても調べた。その結果,子どもは,写真ではしばしば質問を指示対象について尋ねられていると誤解して誤答する場合があるが,ビデオでは映像について尋ねられていると理解していても,実在視的な反応が現れることが明らかになった。しかし発話を分析すると,この子どもたちは,映像を実物と間違えているわけではなく,表象であると十分に理解できているわけでもない移行段階に位置づくことが明らかになり,表象性理解の3段階モデルの妥当性が示唆された。なお,仲介物質の違いについては結果に違いは見られず,現象の違いにかかわらず,ビデオ映像の表象性理解は幼児期後期まで困難であることが示された。
- 日本発達心理学会の論文
- 2008-08-10
著者
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