視覚障害下におけるかな文字の見やすさに関する研究
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概要
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視覚障害下のもとでかな文字の見やすさを検討した。瞬間露出の方法によって明朝体一号活字のカタカナ、ひらがな文字の可読閾を測定した。被験者は正眼の大学生で弱視視力(0.3)の状態はニュートラル・フィルターをかけることによって実験的に作られた。その結果、次のようなことが見出だされた。1)弱視視力(0.3)のもとでは明らかに文字の判読に多くの時間を必要とし、可読閾値は正常視力の約7倍になった。正・濁音間では清音、濁音、半濁音の順に可読閾が高くなった。カタカナ、ひらがな間ではひらがな文字の方が判読される時間が速いことが見出だされる。2)正常、0.3の視力のもとで共通に見えやすく順位が上位となる文字としては、カタカナで「リ」、「イ」、「セ」、「ト」、「ヘ」、「ム」、「ル」であり、共通に順位が下位となる文字は「ヨ」、「ウ」、「ユ」であった。また、ひらがなにおいては「へ」、「り」、「れ」、「ん」、「い」、「し」、「す」、「や」が両視力条件においてともに順位が上位となり、「ま」、「ち」、「さ」、「も」、「う」、「せ」、「め」が共通に順位が下位となった。「ワ」、「あ」、「と」「わ」は正常視力と弱視視力のもとでは上位と下位が入れ替っている。濁音では「ダ」、「じ」、「げ」が順位が上位、「ヅ」、「ビ」、「ぢ」、「ぼ」が下位となっているのがみられる。3)誤読数も0.3の状態において正常視力よりも非常に多くなった。清・濁音別でみると、清音、濁音、半濁音の順に多くなっている。そして半濁音と濁音の文字の誤読は濁点、半濁点についての読み誤りが大半である。つまり、濁点や半濁点を読み落して読みまちがえたりするのが多い。これと反対に清音においては濁点、半濁点以外の他の文字間との読み誤りが多い。視覚障害下における文字の見やすさを弱視教育上の実際的なものとするにはなお各種の視力のもとでの追求と実際の弱視者についての追試比較が必要になる。更に文字と弱視児の読みとの関係をより適確に把握するためには文字の認知に及ぼす学習的要因あるいは文字外的要因の研究が必要になるだろう。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1969-09-30
著者
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