邦産牧草の水分生理(2) : オーチャードグラスの葉の開閉と水分関係
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概要
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1961-62年の両年にわたり,盛岡市内に栽培されたオーチヤードグラスにつき,葉身折りたたみ現象に関する実験観察を行った。その結果,次の諸点を明らかにした。1.オーチヤードグラスの機動細胞は,葉身主脈直上部にのみ存し,その断面構造を見ると膨大な水泡状細胞8-10個と,透明細胞数個とよりなり,葉身開閉に当り,両種細胞群が伸縮変形する。2.越年生株での機動細胞の発達は,下位葉ほど著しく,同一葉では葉脚部において著しい。また幼葉での機動細胞の発達は,光によつて促進される傾向がある。3.当年生実生苗では,第5本葉あたりより水泡状細胞顕著となり,少数の透明細胞が現れる。第8-10葉で一応機動細胞が完成する。4.正常時の葉身展開度は,同一葉でも葉先部で大きく,また折りたたみは葉先部が先行する。但し折りたたんだ葉身が展開する際は,葉脚部がより早く敏感に反応する。5.葉内含水量は,葉身折りたたみ始めは,正常時葉のそれの約70%,折りたたみ完了時には約60%である。この時期の土壌水分(対容水量%)はそれぞれ,22%,19%内外であつた。6.葉内含水量が正常時の50%,土壌水分が18%以下になれば,葉は枯死する危険性があり,土壌水分13.8%では根部も枯死する。7.折りたたみ葉の蒸散量は,展開葉に対して日中(9-19時)は58.7%,夜間(19-9時)は89.2%になつた。これを葉表面日蒸散量についていえば,折りたたみにより蒸散量はほぼ半減することになる。
- 1963-04-30
著者
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