自閉症児の役割取得訓練(I)
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概要
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自閉症児に対する治療的接近が多方面からおこなわれるなかで、その一次的障害が言語認知の領域において認められるようになってきたのとあいまって、行動療法的接近が多く報告されてきている。しかし、それは、症状を変容させていこうとする対症療法的な取り組みといわざるを得ない。そこで、我々は、自閉の本質を<汝性の欠如>として捉え、治療的接近よりもむしろ教育的かかわりに重点を置いて接近を試みてきた。つまり、自己中心的な状態を脱中心化の方向へ向けさせようとするものであり、それは役割取得させることであって、そのための訓練をおこなった。これを我々は、役割取得訓練と呼ぶことにする。そのために、Selman,R.L.らに従って役割取得能力の発達のための訓練段階として次の5段階を設け、これによって役割取得能力の評価をおこなった。(1)再中心化、(2)自己中心的役割取得、(3)主観的役割取得、(4)自己内省的役割取得、(5)相互的役割取得この訓練のねらいや方法、内容は、学校教育全般にかかわるものであるが、そのプログラムは、集団学習、朝の会(帰りの会)、おやつ学習、遊戯学習、給食指導、養護・訓練が中心となっている。本論文では養護訓練を中心に2事例を報告した。この中では、自由遊び及び課題遊び、役割取得訓練、がおこなわれ、特に役割取得訓練としてV.T.Rによって対象児に自らの活動を見せることや表情写真、表情図を使って表情の意味理解を深めることなどがおこなわれた。これらの訓練の結果、その期間が1年を経たO.Aでは自己中心的役割取得の段階にとどまっているが、他児への関心が高まり、大人に対する関係だけでなく、子どもへの関係もうまれてきており、言葉づかいの中では自他の視点の分化がおこなわれつつある。
- 日本特殊教育学会の論文
- 1979-06-15
著者
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